最高裁判所第三小法廷 昭和46年(オ)656号 判決 1971年11月30日
上告人 岩下光夫(仮名)
被上告人 舟橋世津子(仮名) 外三名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人志貴三示、同志貴信明の上告理由第一点について。
原判決は、被拘束者らに意思能力があることを認めたうえで、被拘束者らはみずからの意思で被上告人方にとどまつているのであつて、強制力をもつて拘束されているのではない旨を認定したものと解されるところ、被拘束者らは上告人主張の拘束時および原審審問終結時にそれぞれ満一四歳、一二歳および一〇歳に達していたというのであるから、このような事項について意思能力を有するものと認めることができないものではなく、右の事実の認定・判断は挙示の証拠に照らして肯認することができ、これに所論の違法は認められない。論旨は、右認定と異なり被拘束者らが意思能力を欠く幼児であることを前提とし、本件に適切でない判例を引用して原判決の違法を主張するものであつて、採用することができない。
同第二点について。
論旨は、被拘束者らが被上告人に拘束されているものであるにとを前提とし、その拘束が違法であることを主張するものと解されるところ、拘束の存在を否定した原判決の認定・判断が是認されることは、前示のとおりであるから、論旨は、前提を欠くものであつて、採用することができない。
同第三点について。
論旨は、違憲をいうが、実質は、人身保護法所定の拘束の事実を認めないで本件請求を排斥した原判決の認定・判断の違法を主張するにすぎないものと解されるところ、右認定・判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第四点について。
記録によれば、原審において、弁護士志貴三示および志貴信明は、上告人(請求者)の代理人であるとともに、被拘束者らの代理人でもあつたものであり、右弁護士志貴三示が原審の各審問期日に出頭して陳述をしていることが明らかである。したがつて、原審の審問手続に所論の違法はなく、論旨は誤つた前提に立脚して右違法を主張するものであつて、採用することができない。
よつて、人身保護規則四二条、四六条、民訴法九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 田中二郎 下村三郎 関根小郷)